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ピン甘日誌 - 14
 ■ スズランの赤い実 10月25日

初夏の頃に、小さな白いベルの形をした花を咲かせるスズランが艶やかな赤い実をつけると知ったのは、丁度去年の今頃 四季の山野草で美しい平庭高原の山野草を紹介されているitigeさんからフォト掲示板にスズランの実の写真を投稿戴いたからだった。山口の家の庭にもスズランを植えてあるが、今まで実を見たことがない私は、この花には実がならないと思いこんでいた。itigeさんの写真の中に、枯れて縮んだ茶色の葉と共に写るスズランの赤い実の美しさは、そんな思いこみを驚きで打ち砕いた小さなカルチャーショックだった。

スズランの赤い実スズランの赤い実

木曽奈良井宿には昼前に着いた。家を出るときは曇りで途中では雨も降っていたがいつの間にか正午近くの太陽が青い空から夏を思わせる強い光を投げかけている。古い中山道の町並みを期待したのだが、折悪しく本通りは工事中で無粋な緑と白の縞模様のパイロンを道路の片側にくねくねと並べてある。土産物屋が軒を連ねる町並みに、賑わう観光客とパイロンの列が、まるで下町の商店街でもあるかのように、日常の煩わしさを溢れさせている。そんな中に少し躊躇いがちに踏み込んで行く。

「この赤い実はスズランかしら」と後から来る家内が私を呼び止めた。振り返ると、土産物屋の通りの向かい側にある植え込みの前でしゃがみ込んで緑の葉の中を指さしている。急いで戻り覗き込むと指先に赤い艶やかな実がたった一つだけ、緑の葉は確かめるまでもなくスズランである。出会いとは必ず思いがけず起こり、少なからず驚きと喜びで胸を熱くさせるもののようだ。

明るい陽を浴びて光るスズランの赤い実を見ながらふと思った。平庭高原も、木曽も夏は気温も高くなく蒸し蒸しすることも無い。気温の高い平地でスズランの実を見たことがないのは気候のせいかも知れないと。

itigeさんの写真を見て以来山口に戻ったら庭のスズランの実に出会えるかも知れないと思っていた赤い実への憧れが、何か少し遠くなってしまったような寂しい想いが胸をよぎった。

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