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ピン甘日誌 - 10
 ■ 雨の谷戸山公園 10月20日

10月8日からの3連休は秋雨前線が太平洋側に停滞して、神奈川では3日間とも雲が垂れ込んだ雨模様の日が続き、とうとう一日も初秋の陽光を楽しむことが出来なかった。8、9の土日は写真の整理や、ホームページの模様替えなどで時間を潰したが、さすがに3日目となると、どこかに写真を撮りに行きたくて性がない。

朝から小ぬかのような雨が降っている。時折子供のかん高い遊び声が聞こえる、雨が上がったのかと覗いてみると、カッパを着て三輪車を漕いでいる。3日も家に閉じこめられ、有り余った元気が勝って、小降りを狙って表に出たに違いない。

お昼近くになり、空が明るくなり時折雨が止んでいるようである。家内と娘は連れだって買い物に出かける準備を始めた。近頃は滅多にお伴をする事が無いので、私には声もかからない。うずうずしている気持ちも顕わに、負けじと、私もリュックにカメラとレンズ、タオル、寒さ避けのジャケットを詰め込み、折りたたみ傘と三脚を手にして、一足先にアパートを出発した。行き先は電車を使い、小田急線座間駅から歩いて行ける谷戸山公園である。

ゲンノショウコ野鳥の原っぱでみつけた白花のゲンノショウコ

花の名前を憶えると、不思議にその花が目に付くようになる。そんな経験を何度となくしているが、今回も同じ経験をした。花は「ミゾソバ」と「ゲンノショウコ」である。

ミゾソバは「掲示板」に投稿戴いた小さく可憐な花で初めての出逢いである。なんと、株は高さ幅とも4~50cmと大きく、湿地帯にこんもりと群生していた。ゲンノショウコは日本中に自生している野草だが、どこの道端にでも生えている訳ではないようだ。谷戸山公園のゲンノショウコは、此処に1株、あちらに1株と丹念に生い茂った草藪を見て回りやっと気付く程で数も少なくひっそりと咲いている。

初めてゲンノショウコ花の形を知ったのは「四季の山野草」のHPで、その翌日、出かけた先の箱根ターンパークで一休みと車を駐めた見晴台で、不思議なことに早速この花を見掛けそさくさとカメラに納めた。白花であった。赤花は、この春に撮った花だった。アパートのベランダ前の空き地の一角を赤い小花で賑わしていたが、その時調べてはみたものの名前がわからず、名無しのゴンベエのまま「アルバム帳-初夏と春の野草」に載せた花だった。

アルバムにアップしながら名前が判らないとは、野草オンチを恥じ入るばかりだが、「ゲンノショウコ」と判った時はこの花の名前を知り得た嬉しさと、もう写真に収めていた事の驚きの方が、「恥」に勝っていた。

コスモスとクサキリピンクのコスモスとクサキリ

公園には、雨にも拘わらずポツリポツリとではあるが訪れる人が後を絶たない。雨を気にしてか、のんびりと散策とはいかないが、それでもススキを眺めたり、ミゾソバの咲きこぼれる芦原に渡された木道を辿る2人連れや、僅かばかり咲いている淡いピンクや白のコスモスにカメラを向ける人もいる。

ゲンノショウコ、ミゾソバ、ミズヒキ、ススキなどとあちこち撮り歩いているうちに4時に近くなり、雨足が少し強くなり始めた。湿地帯の直ぐ脇でコスモスの花の上にクサキリを見つけ、カメラに納めているうちに空が一段と暗くなり、とうとう本降りになった。風も強くなり、コスモスも首を振りはじめた。クサキリは首を傾けるピンクのコスモスにしばらく必死にしがみついていたが、とうとう振り落とされてしまった。

本降りの雨に意欲を削がれ、引き揚げ時と、公園の入口近くにある古民家をかたどった「里山体験館」の軒下に場所を移し、帰り支度を始めた。カメラやレンズを濡らせた雨粒をタオルで丁寧に拭き取りながら、良い香りにふと眼を上げると、キンモクセイが満開で、濃いオレンジ色の小花が鈴なりに丸く刈り込まれた姿を飾りたてている。

近所に住む人だろうか、年配の髪が白くなった方が、「いや、なにを撮しているかと思ったらキンモクセイですか、満開で良い香りですね。」と、キンモクセイにカメラを向ける私に話しかけてきた。そして、面白いものを撮りたがっていると思ったのだろうか、「林の中に行ってみましたか」と私に尋ねる。「いえ、きょうは暗いので、林の中では写真が撮れないと思って入っていないんですよ。」と答える。

キンモクセイ満開のキンモクセイ

「それはそれは、いや、林の中には太さが一抱え程有る枯れ木があるんです。」とその人は腕をひろげ幹の太さを作り、「その木にキノコが鈴なりで、白っぽいキノコで大きさは握り拳程もあるのが、地面の生え際から、ずっと上の方まで生えていて、そりゃ見事なものでした。」と続け、「ところが、食べられるってしっているんでしょうか、今日見たら、手の届くところは皆無くなっちゃってるんですよ。」と、少し腰をかがめ手を下の方に差し出し、「こんな上の方まで」と背伸びをし高く腕を伸ばしてくれ、続けて、「でも、この上の方には、まだまだ白いキノコがあるんですよ。」と、私の顔を見ながら熱心に教えてくれる。

が、相づちを打ちながら、キンモクセイを撮り終わり本降りになった雨を気にしながらカメラをしまい始めた私を見て、その人は少し首をすくめ、行ってしまった。私も傘をさし、軒下をでると駅へ向かって歩き始めた。

この次は林の中に入って撮ってみようか、と思いブナの林を振り返ると、夕闇に包まれはじめた暗いその奥に、手の届く範囲のキノコを失い、上の方だけに白いキノコをつけた枯れ木の、雨に濡れ黒ずんだ幹が、ふと、霞んで見えたような気がした。

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